夏前から、知ってはいたのですが、漸く手にすることができました。恩田 皓充(お
んだ ひろみつ)君の「青空の指きり」(河出書房新社)です。
帯に曰く「俳句界の新星、13歳鮮烈にデビュー」と。
ちょうど季節に合ったものとして、先ず……。
秋の雲茶碗のふちも空の果て
彼が「5歳の時にはじめて詠んだ」のが、次の句。
南天をとろうとおもえば落ちにけり
もちろん、母親の侑布子さんが書きとったもので、侑布子さん自身、俳句を作って
居られた。その句作の折々に、苦吟を口にして居られたのであろうことが想像されま
す。切れ字や季語など、小学生以下の年齢では、始めから詠める筈がないのです。
風船や空にはじめておつかいに
春眠に平泳ぎする大男
足跡を重ねあわせて山眠る
……………
しかし、当然ながら、最初の思いつきのイメージやコトバは、お母さんが整えられ
た型を吸い取りながら、自分の表現に生かされて行きます。
芋のつゆ葉っぱのおすべりすべりそう
夕焼けて破片をかざす秋の沼
菊の雨えんぴつ一本捨てられて
蜩や記憶の糸を引き寄せる
…………
御本には制作年次や年齢が記されていません。従って「大工さん鉛筆耳に釘くわえ」
のような作品の隣に「あぶらぜみ空をいためて食べている」と並んでいたりします。
又、ありのままの叙景の句が初歩で、象徴的な句が大きくなってからの句とも言い
兼ねます。ただ、少なくとも、最初にご紹介した句「茶碗のふち」の句は、もっとも
初期の句ではあるまい、と思えるだけです。
芸術的な才能の開発が、極めて年少の折からの方が効果的、というのは、音楽や画
だけではないことを思い知らされます。
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