No.223 −愛の俳句(1)−



   俳句は、「花鳥風月」を描く、歌う、写生するものではあるのでしょう
  が、近代になって、特にそのことを揚起した正岡子規でも、人生の哀歓を
  浸ませた作品を多く作っています。
     今回は、そんな意味で谷口桂子著の『愛の俳句 愛の人生』('01, 4月、
  講談社)からの御紹介。
   同書には、男女それぞれ6人ずつ、12人の俳人の人生と作品とが取り上
  げられていますが、その中から、私自身が余りよく存じ上げなかった3人
  の女性俳人を取り上げてみたいと思いました。

   先ず、女性俳人の中で4Tといわれた方(中村汀女、星野立子、橋本多
  佳子)のお一人、三橋鷹女(1889~1972)から。

         鞦韆は漕ぐべし愛は奪うべし
         (しゅうせん)        三橋 鷹女

         この樹登らば鬼女となるべし夕紅葉
                                           (以下同じ)

         夏痩せて嫌ひなものは嫌ひなり

         初嵐して人の機嫌はとれませぬ


   キツイですねぇ。激しいですねぇ。まっすぐまっしぐら、です。
   谷口桂子氏によれば、鷹女の「好きなもの」は「犬と牡丹」。「嫌いなも
  の」は「雑巾掛けに美粧院に唐茄子に猫」なんだそうです。
     しかし、お子さんに対しては、

         虫の名ををしへあひつつ母子寄れる

   という作もおありですし、晩年には

         女の香わが香をきいてゐる涅槃

   という句もありますので、穏やかな日和のような時間も、あったのです。

   22歳で歯科医師 東健三氏と結婚、その翌年(大正12)長男誕生。夫婦
  の年齢差9歳とのことですから、ご主人の包容力をうかがうことができま
  す。
     それとも、実生活と作品の世界は、まったく別のものだったのでしょう
  か。

   人生の哀歓を「詠う」のは、短歌の方が作りやすいと思っていましたが、
  瞬間芸のように、サッと「切り取る」のが俳句なのかも知れません。

   これも晩年の句。

          老ひながら椿となって踊りけり


   最初に紹介した2句目の「鬼女」の句とともに、歌舞伎の舞台をも思わ
  せる絢爛さがあります。さすがに女性ならでは、ということでしょうか。



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