No.235 −逃げる−



   俗言に「一月は行く、二月は逃げる、三月は去る」というのがあったように思いま
  す。ともに、あっという間に過ぎ去ってしまうような感じ、という意味です。

         一日を捕らえよ二月逃げ易き
                             堀田 幸爾

         逃げやすき時間を壁に貼り二月
                        益田 清


   学校というところは、世間様のそんな感じより、実は、もっと早く過ぎ去る時期な
  のは、皆さん方、いずれもの実感ではないでしょうか。
     3年生は卒業直前の諸行事が進行していますし、私立の学校では、自前の入学試験
  を行わねばなりません。新しい年度の人事や、具体的な予算の詰めも行わねばなりま
  せん。

   厳しい寒さの一月を過ごしたその後に、関東地方では思いがけぬ時にドカッと雪の
  降ることさえあります。しかし「春」は一歩一歩、確実に歩み寄って来ています。

          枯枝に初春の雨の玉 円(まど)か
                         高浜 虚子

          れんげ田に藁撒く春のはじめかな
                         細見 綾子

          水ひかる二月真鴨は月の鳥
                         石原 舟月

          わが声の二月の谺(こだま)まぎれなく
                         木下 夕爾


   「初春」は「はつはる」と読みますと「新年」の意味ですが、「しょしゅん」と読
  みますと「早春」の意味になります。手品みたいですが、習慣、慣習、です。

          二月の森の胎動 軍手脱ぐ
                         渋谷 澄子

          鶴の羽や白きが上に冴え返る
                         河東 碧梧桐

          寒戻る寒にとどめをさすごとく
                         鷹羽 狩行

          雪山に春のはじめの滝こだま
                         大野 林火

          木より木に通へる風の春浅き
                         臼田 亜浪

          春寒や竹の中なるかぐや姫
                         日野 草城

          山は春遅し湯殿の灯の暗く
                         井本 農一




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