No.239 −遠日点−



          四行詩集『表徴』とその周辺より
                             田口 義弘
                   停留場の屋根で                
                   過ぎた季節がうなだれている    
                   遠日点の冷たさのなかで        
                   ひとつの声が結晶する          
               (詩集『遠日点』'99、9月、小沢書店より)

                   ただ一羽の白い蝶の幻が 
                   天空の中心へと         
                   限りなく浮揚する       
                   海辺の冬の朝の一瞬     
                                 (同 上)

   「あとがき」によれば、作者は現在も京都大学で教鞭をとって居られるドイツ文学
  (カロッサ・リルケ等)の御専門でいらっしゃるようで、詩作は'80以降とのことで
  す。とは申せ、文学のアマチュアではない訳で、この引用の詩集「遠日点」も、第二
  詩集に当たります。
     私どもは、著名な御作を、又は秀れた御作を、専ら媒介者の如く生徒、学生に伝え、
  読み解く手助けの役割を業としてきているのですが、自ら「作る」ことに努力してい
  る方々もない訳ではなく、そのいずれが伝達者としての役割に役立っているのかは、
  単純に結論づけ得ないと思われます。しかし、自作を得、それが公知もされ得ている
  ことは、一つの自信にもつながるであろうことは、いうまでもないことです。

                  冬の痛み
                          田口 義弘

                            いつのそれは石と壁?            
                            長い冬の領域……                
                            枯れた木立の                    
                            彼方に降る乏しい花々。          
                                                            
                            遠日点の掌の、                  
                            消えのこる                      
                            徴をめぐる                      
                            記憶のような……                
                                                            
                            そしてふと私はおまえなのだ、    
                            痛みに重い                      
                            おまえの顔のなかから            
                                                            
                            ひとつの眼差しが、              
                            惑いのように私を見つめ          
                            そして識るとき。                
                            (同 上)


   因みに
     遠日点;(えんじつてん)
       太陽系の惑星・彗星(スイセイ)などの楕円(ダエン)軌道上で、太陽か
       ら最も遠い点
                            (新潮国語辞典 第二版)
       (ケプラーの法則によって、遠日点では公転速さが最も遅くなります。)



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