No.269 −夕暮梅花−



                       夕 暮 梅 花                      
                                                                 
                 陽落向黄昏                                      
                           陽落ちて黄昏になんなんとす  
                 優梅香満周                                      
                           優しい梅の香は周りに満ち    
                 其花色純白                                      
                           其の花の色は純白            
                 澄青大気中                                      
                           澄んだ青い大気の中          
                 凛白咲誇梅                                      
                           凛と白く咲き誇る梅          
                 自心詩情浮                                      
                           自ずから心に詩情浮かぶ 


   漢詩を読み慣れておいでの方なら、オヤ?と思いになるかも知れませんが、馴れな
  い方なら、え?誰の?と素直にご覧になるかも知れません。

   実は、この漢詩は、小学4年生だった時の堀 明子さんの作。

   「この詩は本と首っぴきで、二日がかりで作りました。めんどうくさい法則があっ
  て、平声とか仄声とかを、きちんとならべるきまりは……。」

   と、ご本人の注釈・解説がついています。加えて申し上げるなら、ご本人は1988
  年、16才で亡くなって居られます。上記の詩は、その没後に出された『つぼみたく
  さん』(草思社、'02,9月刊)の、178頁に載せられたものです。

   彼女の作は、漢詩ばかりではありません。年令なりにごく当たり前の、しかし、さ
  すがにキラリとしたセンスの詩も、たくさん載せられています。


                夕やけの富士
                         堀 明子

                富士の後ろに                                   
                夕やけの空がある                               
                夕やけ空のうしろにはてしもなく広い空間がある   
                                                               
                               (上掲書、P134)


   でも、ちょっと理屈がなければいいなァと思う作品があります。

              くうそう十雲

               空をときどき小さい雲が                                       
               すごい速さで横ぎって行く                                     
                                                                            
                                                                            
               雲の上に乗れればきっと                                       
               さっきの雲はレースの車                                       
                                                                            
                                                                            
               りっぱな雲なら名前つき                                       
               月見(つきみ)丸に日中海、白引(しらひき)号                 
               雨黒(あまぐろ)丸やら虹友(にじとも)丸に春雨(はるさめ)号 
               あげくのはてには白馬(しらうま)丸                           
                                                                            
                                                                            
               では もう一言                                               
               注意しとく                                                   
                                                                            
                                                                            
               人るいがうんと研究して                                       
               雲に乗れるようになったら                                     
               地きゅうのみんな                                             
                                                                            
                                                                            
               なにもおとさないで                                           
               せんそうにつかわないで!!                                   
                                                                            
                                       (上掲書P.62)
                               

   もっと長い間生きていて下されば、もっともっと研ぎすまされた詩を作ってくれた
  ことでしょう。

   もう一つ、付け加えましょう。彼女は自分の詩に作曲をしています。


               ピンクのばら
                         堀 明子

                            ピンクのばらは    
                            やさしいばら      
                            いくつにも        
                            いくえにも        
                            かさなる花びら    
                            きれいだな        
                                              
                                              
                            ピンクのばらは    
                            けだかいばら      
                            花びらの          
                            手ざわりは        
                            ベルベットみたい  
                            やさしいな        





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